手足の痺れと冷えのご相談。
2年前に扇風機やクーラーの風を受けてから手足の痺れや冷えを感じるようになり、少しずつ範囲が広がってきた。それとともに痺れ感も強くなったとのこと。
長袖を着ていたら症状緩和。風呂に入ると軽減する。座位で足の甲と裏がピリピリする。こむら返りをよくする。広背筋がだるい。肩こり、目の疲れあり。
胃腸はそんなに強くなく、お腹が空くがそんなに食べられない。睡眠は良好。舌は淡江で白膩、歯痕あり。
弁証は脾虚と血痺とした。
血痺とは「金匱要略 血痺虚労脈症併治」の1条・2条にあり、運動不足で表の守りの弱い人が、汗をかいたままで風邪(ふうじゃ)の侵入を許してしまい、痺れなどの症状が発生した人に「黄耆桂枝五物湯」を与えるよう指示があります。
この方の症状の発生がこの条文にあっており、またその他の症状も血痺を引き起こす素因をお持ちだと判断し、黄耆桂枝五物湯と脾虚の漢方薬を合わせてご用意しました。
再診では症状があまり変わらないとのことで、もう少し衛気を強化するため、補腎陽と補脾を兼ねた方剤を合わせました。
これは効果があったようで、痺れが少しずつ改善してきたとの報告で、しばらく続けることにしました。
しかし、再び症状の改善がストップしてきたというため、黄耆桂枝五物湯はそのままで他の方剤を変えたりもしましたが、あまり効果を感じないとのこと。
黄耆桂枝五物湯はあっているはずなので、この方剤をしっかり効かせるために気の出入りをよりスムーズにする生薬を加味することにし、他の方剤を加えることなくこの方剤のみをお渡ししました。
そうすると、手足の痺れはなくなり、症状が大幅に改善となったことで、漢方治療は終了となりました。
途中の経過で症状の改善が止まったこともあり、少し迷いましたが、やはり傷寒論・金匱要略を信じて治療方針を通したことで、最終的にご本人も満足され、治療が終了できたことでこの医学の素晴らしさを再確認できました。