これが直中少陰です

呼吸器〈症例など〉

先日、いつもご来店されている漢方相談のお客様が風邪をひいたというので、予約の日まで待てずに急遽相談に来店されました。

4日ほど前に、寒気と咽痛がして、常備してある金羚感冒錠(銀翹散製剤)と板藍根粉末顆粒を服用されたとのこと。

咽痛は多少マシにはなった感じで、相変わらず寒気がし、鼻水と痰(透明)と咳が出だした。

以前はいつも風邪をこじらすと、気管支炎になり咳がしつこく残るため、難儀していたが最近は咽痛があれば金羚感冒錠と板藍根ですぐに治まり、ひどくなることはなくなっていた。

今回はいつものようにいかず、またあの気管支炎になるかもしれないと怖くなり、相談に来られました。

この場合、寒気がして咽痛があるため、普段の症状とは違い温病ではないと考えられます。

(温病の場合は口の渇きがあったり、口が乾燥することが多く、寒気は感じることはあっても聞けばあるくらいで、ほとんど感じないか、逆に熱感を訴えることが多い)
寒気がある場合は一般的に「太陽病」として、桂枝湯、葛根湯などを考えるが、発汗はなく、肩こりは以前からあるとのこと。

太陽病の寒気は背中全体がゾクゾクするし、今回発熱もないということでした。

決定的なのは何となく怠く横になっていたいと仰っていたことでした。

傷寒論少陰病281条に「少陰之為病、脉微細、但欲寐也」とあり、少陰病は脈に力がなく、ただただ横になっていたいという訴えがあり、症状があまりはっきりしないことがあります。

この方の今回の風邪は、一般的な太陽病や温病などの体の表面から邪が入ってくるパターンではなく、いきなり少陰病というステージに邪が入り込んできた「直中少陰」といわれるものと判断。

処方としては、少陰病で咽痛の場合、311条の甘草湯となるが、痰も発生しているため桔梗湯とし、少陰病で寒気と咽痛があるため麻黄附子細辛湯を合わせて処方しました。

(これは麻黄附子細辛湯というより、麻黄附子甘草湯の方意に近くした処方となります)

そんなに日数もかからないと思われたので、3日分だけお渡ししました。

数日後ご来店され、あれから寒気、鼻水、痰と咳も治まり症状がほとんどなくなったので、いつもの煎じ薬に戻しますとのご報告。

気管支炎に陥らず良かったです。

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